Conductive Blog | 1月 29, 2024

なぜConductive Venturesは資本効率を重視するのか?

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フェデラルファンド金利 (FFレート)[基佐1] [KA2] [1]が2022年2月の0%から今日では5.25%に上昇したことで、資本が無償で手に入る時代は終わった。金利が上昇している環境では、ベンチャーキャピタル(以下、VC)もCEOも、 「何が何でも成長させる」 戦略から 「資本効率の良い成長」

[1] FFレートとは、フェデラルファンド(Federal Funds)レートの略で、連邦準備銀行(米国の中央銀行)に預け入れる無利息の準備金(フェデラル・ファンド)が不足している銀行が、他銀行に無担保で資金を借りるときに適用される金利を指し、アメリカの経済を大きく左右する指標。

 [基佐1]FFレートはかなり専門用語になるので、補足入れたほうがいいかもしれないです。特に日本的にはFRBの動きを注目している人がいないので、ここで躓かれるのはよくないかと。
 
以下、SMBC日興証券の解説
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FFレートとは、フェデラル・ファンド(Federal Funds)レートの略で、連邦準備銀行(米国の中央銀行)に預け入れる無利息の準備金(フェデラル・ファンド)が不足している銀行が、他銀行に無担保で資金を借りるときに適用される金利を指し、アメリカの経済を大きく左右する指標。
そうですね、注釈入れていただけますと助かります! [KA2]

にシフトしている。Conductive Venturesでは、資本効率の良い起業家に投資している。2017年の創業以来、一貫してこの投資理念を掲げてきているが、資本効率の良い企業を支援して構築することは、私たちだけでなく、リミテッド・パートナー(以下、LP)、創業者やCEO、そしてその従業員にとっても良いことだと信じている。かつて多くのベンチャーキャピタルはあらゆるコストをかけた成長モデルを採用してきた中、なぜ私たちはこれほどまでに資本効率を重視しているのか?
 
資本効率の良さについて、あるエピソードを交えて説明していきたい。かつてドットコム時代に、私の友人であるブラッドは、上司からXerox[明山1] [KA2] 社のプリンターマシンを1ドルもかけずに手に入れるという、一見不可能に見える難題を与えられた。どうしたら良いかわからなかったブラッドは、Xeroxマシンのリース会社へ電話したところ、最初の1カ月は無料だということがわかった。30日後、上司はXeroxのマシンが別のマシンに交換されていることに気づき、ブラッドにXeroxのマシンを交換した理由を尋ねると、ブラッドは予算がないため複数のリース会社の30日間の無料トライアルを利用して、オフィス用のXeroxマシンを無料で入手できることに気づいたと私に説明した。私はこの話をとても気に入っている。創造性、臨機応変さ、資本効率性を同時に発揮している良いエピソードである。

 [明山1]アメリカでXeroxはかつてコピーを取る=make a xeroxと今の「ググる」ぐらい日常的に使われていましたが、日本の読者はわからないと思うので、プリンターマシンとしましたが、正しくはコピー機でしょうか?
わかりやすい方の表現に修正いただいて大丈夫です、ありがとうございます! [KA2]

同様なエピソードとして、私の両親が60年代後半にアメリカに移住したとき、持っていたのは母国[明山1] 台湾からの片道切符と荷物1つだけであった。両親はお金をあまり持っていなかったため、たった1ドルを使うにも神経をすり減らす生活を送る中で私たちを育ててくれた。
 
私たちConductive Venturesも同じように会社を運営している。我々は、各チームメンバーが会社の1ドルを自分のお金と同じように扱い、さらにその1ドルが何かクリエイティブなものにつながるように使うことを推奨している。友人ブラッドが行ったエピソードのような話は私の身の回りにたくさんあるので、喜んでシェアしたいと思う。
 
移民である私の両親が、一所懸命稼いだお金を最大化する創造的な方法を編み出したように、また私の友人ブラッドがXeroxマシンの無料利用方法を見出したように、そして私たちがConductive Venturesを運営しているのと同じように、優秀な起業家たちもそうしていると思う。だからこそ、私たちと同じように資本効率を重視する起業家に投資することが重要だと考えている。
 
さて、資本効率とは何かを表すエピソードをここまで紹介してきた。[基佐2] 資本効率を見ることが成功する会社を作るため非常に優れた方法でもあると私が考える3つの理由を挙げていきたいと思う。
持続可能で資本効率の高い成長は長期的に利益を生む
SaaS企業におけるT2D3[明山3] [1]の落とし穴
VCによる数式が起業家に合わないとき


[1] T2D3:SaaSビジネスを展開する企業がPMF(プロダクトマーケットフィット)の後にARR(年間経常収益)を「3倍、3倍、2倍、2倍、2倍 (Triple, Triple, Double, Double, Double)」のペースで毎年成長させること。

 [明山1]Carey Laiさんのお名前から台湾出身だなと日本の読者はピンとこないと思うので、念の為「母国」と補わせて頂きます。
 [基佐2]定義というより、投資効率のエピソードを紹介したというところかなと思うので、修正しました。
 [明山3]後述してあるものの、注釈必要。
T2D3:SaaSビジネスを展開する企業がPMF(プロダクトマーケットフィット)の後にARR(年間経常収益)を「3倍、3倍、2倍、2倍、2倍 (Triple, Triple, Double, Double, Double)」のペースで毎年成長させること。

(1) 持続可能で資本効率の高い成長は長期的に利益を生む
 
私はいつも起業家に、資金調達は目的のための手段であって、それ自体が目的ではないと言っている。VCは、投資先が大量の資金を調達してTechCrunch[基佐1] [1]に取り上げられても、ハイタッチはしない (少なくとも私はしない) 。資金調達について最もわかりやすく表現するならば、最終目的地―より良いM&Aの出口やIPO―に到達するための一連のオンランプ(高速道路の入り口)とオフランプ(出口)である。
資金を調達するたびに、オフランプ(出口)を遠ざけることになる。実際には同じ額だけ起業家が稼げたであろう起業家であっても、資金調達によって出口がさらに遠ざかったり、結局のところ全く稼げなかったりという事態も起こり得る。これについては後述する。
もし1つ覚えてもらえるとするならば、より賢明な資金調達をすればするほど、より多くの選択肢を維持することができるということだ。VCラウンドの大部分は一般的にマイルストーンベースの資金調達である。つまり、資金を調達する、事業を進める、さらに進める、そしてさらに資金を調達する、ということになる。
非常に高い価格で大量の資金を調達すると、潜在的な買収の可能性は減少する。資金調達の規模が大きくなればなるほど、潜在的な買収の可能性はどんどん減少していく。同時に、優先分配権[基佐2] [2]も増え続け、最終的に起業家と従業員の取り分がゼロになる可能性もある。
ファイナンスを専門にする教授がかつて言っていたように、負債や株式を増やすことは、夕食と一緒にワインを飲むようなものである。夕食時に1~2杯飲むことにはメリットがあるかもしれないが、1~2本飲み始めると問題が出てくる。多ければ多いほど楽しくなるとは限らないの

[1] TechCrunch(テッククランチ)は、アメリカブログサイト(ニュースサイト)である。主にIT系のスタートアップ(ベンチャー)Webに関するニュースを配信している。
[2] 会社が清算する場合における残余財産の分配に際して、優先株主が普通株主に先立って、優先的に一定の金額の分配を受けることができる権利である。 一般に、ベンチャー企業が清算に至った場合、投資家が出資した金額または一定のリターンが最低限保証されるために与えられるもの。

 [基佐1]これも注釈で説明したほうがいいかもしれないです。
ーー
TechCrunch(テッククランチ)は、アメリカブログサイト(ニュースサイト)である。主にIT系のスタートアップ(ベンチャー)Webに関するニュースを配信している。
 [基佐2]これもなじみのない言葉なので補足する必要があると思います。
会社が清算する場合における残余財産の分配に際して、優先株主が普通株主に先立って、優先的に一定の金額の分配を受けることができる権利である。 一般に、ベンチャー企業が清算に至った場合、投資家が出資した金額または一定のリターンが最低限保証されるために与えられるもの。

最後に、一度に多くの資金を調達すると一般的に次の2つのことが起こる。

 (1) 実際には製品と市場の適合性を達成していなくても、より高い成長期待を達成するために資本を投入しなければならないというプレッシャーが高まるということ。

 (2)資金もある(やれてしまう)し、自分が開始するすべてのプロジェクトが成功すると思い込んでしまう。

スタートアップが大企業に勝る最大の武器は、「スピード」と「集中」だ。大きなバランスシートを持つ大企業は、資本を社内に分散させるのが得意で、どんな奇抜なプロジェクトにも資金を提供するが、その中には成功するものはほとんどない。それでも良い。致命傷にはならない。しかし、スタートアップにはそのような余裕はない。一般的に、スタートアップが勝つのは、1つのことを他の誰よりも上手にできるからである。

(2) T2D3の落とし穴
 
最初に、T2D3とは何か?SaaS企業の成長指標で、トリプル、トリプル、ダブル、ダブル、ダブルを意味する。
例えば、200万ドルのARR(Annual Recurring Revenue)[基佐1] [1]であれば、来年には3倍の600万ドル、次の年はさらに3倍の1800万ドル、その次の年は倍の3600万ドル、そのまた次の年も倍の7200万ドル、そして5年後には1億4400万ドルへと成長する、ということになる。
評価倍率を10倍とすると、10億ドル以上の企業価値があることになる。私はこの指標が全くもって好きではない、むしろ大嫌いである。なぜか?


[1] ARR とは「Annual Recurring Revenue(年次経常収益)」の略であり、毎年決まって獲得できる収益のこと。「年間経常利益」や「年間定期収益」とも呼ばれ、特に SaaS などのサブスクリプションビジネスの成長しているかどうかを把握する指標の1つとして重要視されている。

 [基佐1]ARRも同じく補足必要です。
ARR とは「Annual Recurring Revenue(年次経常収益)」の略であり、毎年決まって獲得できる収益のことです。「年間経常利益」や「年間定期収益」とも呼ばれ、特に SaaS などのサブスクリプションビジネスの成長しているかどうかを把握する指標の1つとして重要視されています。

T2D3が2021年に「ゴールドスタンダード」、つまりSaaS企業に投資するVC全員が求めるものである、と起業家たちが考えるようになって以来、何が起こったかおわかりだろうか?ご想像の通り、Conductive Venturesにピッチを行ったSaaS企業が全てが、魔法をかけられたように、100万ドルから300万ドル、900万ドル...あるいは500万ドルから1500万ドル、4500万ドル...という売上を掲げていたのである。しかし、このような成長を達成できるソフトウェア企業はほとんどない。科学的でないが私の肌感覚としては、このような成長を達成できる企業は1%にも満たないと思う。この指標はExcelスプレッドシート上では非常に魅力的だと思うが、それに伴う課題を完全に無視していると言える。T2D3を達成し、最終的にIPOした会社に投資した経験があることからこう言える。
 
このモデルの最大の問題点の1つは、対象企業が明確なProduct-Market Fit (PMF) [基佐1] [1]を既に取得していることを前提としていることだ。このモデルに則した成長ができると考えている多くのソフトウェア企業では、最初に理想的な顧客プロファイル (Ideal Customer Pofile: ICP) を定義しないまま、セールス組織構築のために多額の費用をかけ始める。
あるいはまだPMFを解明している最中である、ということがよくある。私がよく目にするのは、収益やARRが相応に立ち上がる前に、かかる費用が明らかに増加するということだ。そのようなシナリオにおいては、往々にして重大な課題に直面することになる。
 
ところで、最初にPMFとICPを明確にすることに集中しつつも、資金調達をほとんどせずとも非常にうまく事業を成り立たせることができている企業の事例がある。SaaSにおける優れた成功例として挙げられるのはVeevaQualtricsの2社である。
 
Veeva
現在330億ドルの時価総額を誇るVeeva Systemsは、2013年に上場するまでの全ラウンドで700万ドルしか調達していない。Veevaは、ライフサイエンス業界向けのエンタープライズクラウドプロバイダーとしてPeter Gassner氏によって2007年に設立され、単一業界向けの単一CRM[基佐2] [2]製品としてスタートした。
Veevaは、事業拡大のためライフサイエンス業界のICPに完全フォーカスをすることを選んだバーティカルSaaS[基佐3] の初期の成功例の1つであり、非常に資本効率が高かった。Gassnerは2007年にエンジェル投資家から300万ドルを調達したが、その翌年にはEmergence Capital

[1] PMFとは「Product Market Fit」(プロダクトマーケットフィット)の頭文字を取った言葉で、「顧客が満足する商品を、最適な市場で提供できている状態」のこと。
[2] CRMとは、Customer Relationship Management(カスタマー リレーションシップ マネジメント)の略で、日本語では「顧客関係管理」または「顧客関係性マネジメント」などと訳される。
製品やサービスを提供する企業が、顧客との間に親密な信頼関係を作り、購入してくれた顧客をリピーターに、リピーターからファンになるような活動を行い、顧客と企業の相互利益を向上させることを目指す総合的な経営手法である。
 

 [基佐1]注釈必要
PMFとは「Product Market Fit」(プロダクトマーケットフィット)の頭文字を取った言葉で、「顧客が満足する商品を、最適な市場で提供できている状態」のことです。
 [基佐2]CRMとは、Customer Relationship Management(カスタマー リレーションシップ マネジメント)の略で、日本語では「顧客関係管理」または「顧客関係性マネジメント」などと訳される。
製品やサービスを提供する企業が、顧客との間に親密な信頼関係を作り、購入してくれた顧客をリピーターに、リピーターからファンになるような活動を行い、顧客と企業の相互利益を向上させることを目指す総合的な経営手法である。
 [基佐3]Vertical(バーティカル)SaaSとは、業界・業種に特化したSaaSのことです。Verticalは「垂直」を意味しています。
ある業界・業種にとって使いやすくなるよう、機能や使用感を深掘りしていく「垂直方向のSaaS」として、バーティカルSaaSと呼ばれています。

のような機関投資家から400万ドルを調達した。そしてそれ以降はベンチャーキャピタルからの調達はなかった。

今日において、6年以内に700万ドルの資金を調達して上場する企業を見つけるのは難しいだろうが、Veevaは先駆者だった。2010年のわずか1300万ドルから、2013年には1億3000万ドルの年間売上高を達成し、2010年には損益分岐点を突破し、その後の数年間は黒字だった。最初の投資家であるEmergence Capitalは、2008年の400万ドルの投資に対して300倍のリターンを上げた。

出典:Ben Hider/NYSE Euronext

Qualtrics
エクスペリエンス管理ソフトウェア企業のQualtricsは、2002年にRyanとJared Smithの兄弟によって、ユタ州プロボの実家の地下室で父親とともに創業された。多くのスタートアップとは異なり、創業者たちはほぼ十年間自力で会社を立ち上げ運営し、2012年にはAccel[基佐1] [1]が初の外部投資をリードし、シリーズAラウンド[基佐2] [2]で7000万ドルという巨額の資金を調達した。資金調達への長い道のりの中で、資本効率を高め、PMFを達成し、やるべきことへ集中フォーカスしながら会社をスケールすることに焦点を当て、Qualtricsは非常に強固な基盤の上に会社を構築し、非常に早い段階で収益性への道をひらいた。
 
このわずか5年後の2017年にIPOを計画していたときには、Qualtricsの売上高は2012年の5000万ドルから2017年には2億9000万ドルに急増し、粗利益率は75%近くに達していた。この強力な基盤を受けて、SAP[基佐3] [3]は2018年にQualtricsに対して80億ドルの買収提案を行い、創業者らはこれを受け入れた。その後、QualtricsはSAPからスピンアウトして上場した後、SAPに再買収され、再び売却された。現在はPEファンド[基佐4] [4]が所有しており、これまでに総額32億2000万ドルを調達している。しかし、最初の10年間は完全に自己資本だったことを覚えておいてほしい。


[1] Meta(Facebook)やSlackの初期出資元として有名なベンチャーキャピタル(https://www.accel.com/
[2] 資金調達ラウンドとは、主にスタートアップ企業が成長していく過程を資金調達の側面から段階ごとに分けたものを指します。
シリーズAラウンドとは、製品・サービスが正式にリリースされ、事業が本格化してくる段階です。
[3] ビジネスプロセス管理の分野で世界有数のソフトウェアメーカーとして、データを効果的に処理し、組織全体に情報がスムーズに行き渡るようにするソリューションを開発している。
[4]PEファンドは 「プライベート・エクイティ・ファンド」の略。複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金を未上場企業に投資し、経営支援など経営に関与することで企業価値を高め、IPOや売却によって利益を得ることを目的としたファンド。

 [基佐1]フェイスブックやSlackの初期出資元として有名なベンチャーキャピタル
 [基佐2]資金調達ラウンドとは、主にスタートアップ企業が成長していく過程を資金調達の側面から段階ごとに分けたものを指します。
シリーズAラウンドとは、製品・サービスが正式にリリースされ、事業が本格化してくる段階です。
 [基佐3]SAP は、ビジネスプロセス管理の分野で世界有数のソフトウェアメーカーとして、データを効果的に処理し、組織全体に情報がスムーズに行き渡るようにするソリューションを開発しています。
 [基佐4]「プライベート・エクイティ・ファンド」の略。複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金を未上場企業に投資し、経営支援など経営に関与することで企業価値を高め、IPOや売却によって利益を得ることを目的としたファンド。

(3) VCの数式が起業家に合わないとき

VCの数式とは何か?それはVCのビジネスモデルを成り立たせる計算式である。VCは2つの方法で収益を上げているそれは、①管理手数料と②持ち越し利息だ。どちらもファンドの規模に対する割合に基づいているため、本質的には、ファンドがより多くの管理手数料を得るためにはできるだけ多くの資本を調達しようとする誤ったインセンティブが働く。これはある意味、資金調達額が増えれば増えるほど、資本の返却が困難になるため、持ち越し利息に不利に働く可能性がある。

1億ドルのファンドの場合、年間2.0%の管理手数料が10年間かかると仮定しよう。これは、ファンドの存続期間中の管理手数料2000万ドルに相当する。続いて10億ドルのファンドを想定してみると、このケースでは2億ドルの管理手数料に相当するということになる。

企業が資本効率を上げすぎると、資本をあまり消費しなくなり、VCは資金調達の機会を失う。したがって、VC側にも企業の資本効率が高すぎないようにするための、ひねくれたインセンティブがあるのかもしれない。
 
VCの数式の反対側には起業家がいる。例えば、あるCEOがシリーズAで1500万ドルを調達したとしよう。ラウンド後、そのCEOは自社の25%を所有している。翌日に会社が3億ドルで売却された場合、CEOの収入は7500万ドル (3億ドル×25%) になる。では、その代わりにCEOがシリーズB [基佐1] [1]で5000万ドルを調達することを決め、所有権が15%になったとしよう。同じ7500万ドルを得るためには、会社をいくらで売却しなければならないだろうか?答えは5億ドルとなる (15% x 5億ドル=7500万ドル) 。
最初のポイントに戻るが、増資はM&Aの出口やIPOの機会までオンランプとオフランプの連続である。資金を調達するたびに、次の投資家たちは一定の見返りを期待したりあるいは損失を被ったりする。その度に希薄化が起こり、CEOとして同じ額のリターンを得るためには、エグジット[基佐2] [2]はその分大きくする必要が出てくる。したがって、資金を調達する前に潜在的なエグジットの方法や、エグジット後の全体的な清算の優先順位、その他のいくつのオプションを持つかについて考える必要がある。
 
最後に、VCは投資のポートフォリオを構築することでリスクを分散する、ということを覚えておいて頂きたい。投資の中には、素晴らしいものもあれば、そうでないものもあるかもしれない。多くの企業にとって、ポートフォリオを成功させる可能性を高める確実な方法は、ポートフォリオに資本効率の高いビジネスをできるだけ多く含めることだと考える。
 
起業家としては、他の人がシャンパンのボトルを開けているのに、自分は支払いに追われるなどという状況にはならないようにしたいものだ。資本効率がすべての関係者にとって有利な戦略である理由は、CEOのエグジットの選択肢を維持しつつ、会社を持続可能な長期的成長に向けて準備し、そして何よりも、企業の周りにいるすべての関係者が投資した当初よりも多くのリターンを持って帰れるということを保証できるからである。これは今、私たちみんなができることではないだろうか?
 
 
 
もし資本効率が高いビジネスを行っている場合は、info@conductive.vcまでご連絡を。そうでない場合は、私たちから資本効率を気にしない他のVCを紹介させていただきます。


[1] 一定の収益を生み出し、ビジネスが軌道に乗り始めた段階にあるスタートアップ。
[2] イグジット(EXIT)とは、高い成長率が見込める未上場企業や企業再生を目指す会社などの株式を持つ創業者や出資者(ベンチャーキャピタル・再生ファンドなど)が株式を売却し、投資資金の回収および利益の獲得を行うこと。 

 [基佐1]一定の収益を生み出し、ビジネスが軌道に乗り始めた段階にあることが一般的です。これは、シリーズAに比べてより成熟しており、黒字化を目指す必要があるためです。
 [基佐2]イグジット(EXIT)とは、高い成長率が見込める未上場企業や企業再生を目指す会社などの株式を持つ創業者や出資者(ベンチャーキャピタル・再生ファンドなど)が株式を売却し、投資資金の回収および利益の獲得を行うことです。 

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